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東京高等裁判所 昭和51年(ラ)492号 決定 1976年8月02日

抗告人 泰正自動車株式会社

右代表者代表取締役 前山志郎

右代理人弁護士 加藤勝三

相手方 中島正利

主文

本件抗告を棄却する。

理由

抗告人は、「原決定を取り消す。相手方は抗告人に対し本裁判確定の日から七日以内に金一億一九六〇万円を担保提供せよ。」との裁判を求めた。その抗告の理由は別紙記載のとおりである。

ところで商法第二五二条第二四九条第二項により準用される同法第一〇六条第二項は、会社が同条第一項の担保提供を請求するには会社において「訴ノ提起ガ悪意ニ出デタルモノナルコト」を疎明することを要するとされており、右規定は、株主が原告である場合についていえば、原告が株主の権利の正当な行使としてではなく、いわゆる会社荒しのように株主の権利を乱用してことさらに会社を困らせるため訴を提起することがあるので、このような訴の提起を抑制する必要があり、他方株主の権利の正当な行使を妨げないようにすることも要請されるところから、会社において前記の点を疎明したときにのみ原告に対し担保の提供を命ずることとしたのであって、右規定にいう「悪意」とは「害意」の意に解されるのである。右規定の趣旨に照らして検討すると、抗告人提出の資料をもってしても未だ相手方の本件「訴ノ提起ガ悪意ニ出デタルモノナルコト」について疎明があるとはいいがたい。

よって本件担保提供の申立を理由がないものとして却下した原決定は相当であり、本件抗告は失当であるからこれを棄却することとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小林信次 裁判官 滝田薫 桜井敏雄)

<以下省略>

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